2023.12.10【コラム】スキマ時間で決算書を読み解くポイント
こんにちは!INOFLEコンサルティングです。
継続的に事業運営を行っていくためには、事業の財務分析を起点としたPDCAサイクルを回していくことが不可欠です。特に、新たに事業を始める際には、同業他社の財務状況なども参考にして、自社の事業を検討していくことが望ましいです。
これらの分析、検討のためには決算書を正確に読み解く力が求められますが、日々多忙な経営者、ビジネスマンの方々の中には「腰を据えて決算書を読み解く時間を作るのが難しい」と感じている方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、多忙な経営者、ビジネスマンの方向けに、短時間で決算書を読み解くために抑えるべきポイントについて、ご紹介いたします。
決算情報と財務三表
決算情報を確認できる資料は「決算短信」と「有価証券報告書」に分類することができます。
3か月(四半期)ごとに出るものが「決算短信」で、こちらは決算の速報版です。一方で「有価証券報告書」は1年に1回の本決算(3/31等)後に提出される決算の確定版を指し、有価証券報告書の方が決算短信よりも情報量が多くなります。日頃から有価証券報告書に目を通すのが難しい場合には、まずは決算短信だけでも読むことをお勧めします。
これらの決算情報は、各企業のIR情報からも確認できますが、全上場企業の情報がまとまった決算プロというサイトも情報がまとまっており利用しやすいので、ぜひ参考にしてみてください。
決算書の「財務三表」
さて、決算書の内容は財務三表と呼ばれる3つの書類を中心としています。
財務三表の種類と各書類から得ることのできる情報は、以下になります。
財務三表の種類 | 得ることのできる情報 |
損益計算書(P/L) | 「1年間の儲けが分かる」 |
貸借対照表(B/S) | 「会社の資産が分かる」 |
キャッシュフロー表(C/S) | 「会社の現金の流れが分かる」 |
「損益計算書(P/L)」は1年間の会社の儲けを表す成績表のようなものです。「貸借対照表(B/S)」はある一定時点の資産、負債、純資産を表すものですが、「資金がどのように調達され、どのように使われているか」を読み解くことが可能であり、会社の健康状態を確認できます。
「キャッシュフロー表(C/S)」は実際に現金がどのように動いているかを確認するための書類になります。
決算書で見るべきポイント
では、決算書から読み解く際に抑えるべきポイントはどのような点なのでしょうか。
今回は、必要最低限の情報として「その企業は儲かっているか」「倒産する可能性はないか」を読み解くポイントを紹介します。
収益性分析(企業が儲かっているかを読み解く)
指標 | 意味 | 計算式 | 基準値 |
営業利益率 | 本業からしっかり利益が出ているかどうかが分かる | 営業利益/売上高×100 | 1~3%位。5%を超えると優良 |
ROA | 資産を効率よく活かせているかが分かる | 当期純利益/資産×100 | 2%以上位。5%以上で良好 |
ROE | 株主にとって効率の良い会社かどうかが分かる | 当期純利益/自己資本(純資産)×100 | 目安10%、20%を超えると優良 |
収益性を測る指標としては、営業利益率が代表的なものにはなりますが、ROAとROEの指標も確認することで「資産が効率よく活用できているか」「株主にとって効率の良い会社か」といったことが分かります。
一方で、注意点としては、ROAとROEについては、どちらか片方だけを見ても正確な情報が得られないという点、値が高いだけで判断するのが危険であるという点があります。たとえば「負債が多いとROEが高くなる傾向がある」といったことがあるため、資産を母数で見ている(負債も考慮している)ROAも見ることが大事です。また、逆にROAが高いのにROEが低いのは、無借金経営など負債が少ない可能性はありますが、株主からの資金を有効活用できていない可能性がありますので注意が必要です。
安全性分析(企業が倒産する可能性はないか)
指標 | 意味 | 計算式 | 基準値 |
自己資本比率 | 自分のお金と借金のバランスが分かる | 自己資本/総資本(自己資本+他人資本)×100 | 高いほうが安全。少なくとも30%。50%以上あれば良好 |
流動比率 | 資金繰りに問題がないかが分かる | 流動資産/流動負債×100 | 高いほうが安全。 |
固定比率 | 資金繰りに問題がないかが分かる | 固定資産/純資産×100 | 低いほうが安全。 |
「会社が倒産する可能性がないか」、いわゆる安全性を簡単に分析するには「自己資本比率」「流動比率」「固定比率」を見ることで最低限の判断を行うことが可能です。流動比率が高いということは、1年間に入る現金が出ていく現金よりも多い(=安全性が高い)ということであり、固定比率が高いということは、固定資産を自己資本(純資産)でまかなえている(=安全性が高い)ということになります。
決算書は情報の宝庫
かなり簡単ではありますが、今回は決算書を読み解く際に抑えるべきポイントについて紹介いたしました。
決算書分析の観点は、収益性や安全性以外にも、成長性や将来性といった切り口もありますし、それぞれの観点をさらに深堀することも可能です。まとまった時間を作り、様々な企業の決算書を読み解くのは工夫や労力が必要ですが、まずは今回の記事でご紹介した観点で、自身が新たに展開する事業分野におけるプレーヤーや競合の財務情報をの大まかな状況を捉え、新たな事業を立ち上げる際の参考にしてみてください。